Rush、大曲時代の頂点へ|『A Farewell to Kings』と『Hemispheres』

Rush&Rock

こんにちは。
Analog Kid Notesへようこそ。

前回の記事では、1stアルバム『Rush』から『2112』までを聴き直し、Rushが少しずつ「Rushにしかできない音楽」を作り上げていく過程をたどりました。

👉RushがRushになるまで|初期4作品を聴いて『2112』へ

そして『2112』で、そのスタイルはひとつの完成形にたどり着いたように思います。

では、その次にRushはどこへ向かったのか。

久しぶりに『A Farewell to Kings』と『Hemispheres』を続けて聴いてみました。

そこで感じたのは、『2112』で完成したものを繰り返したのではなく、さらに音楽を洗練させ、もっと遠くまで進んでいったRushの姿でした。

この2枚、続けて聴くとまるでひとつの2枚組アルバムのようにも感じます。

今回は、Rushの大曲時代がひとつの頂点を迎える、この2作品を聴いていきたいと思います。

『A Farewell to Kings』― 大胆さと繊細さ

『2112』から続けて『A Farewell to Kings』を聴いて、まず感じたのは、

「さらに洗練されたな」

ということでした。

特に印象に残ったのが、Alex Lifesonのアコースティックギターです。

ハードで複雑な演奏の中に、アコースティックギターの柔らかな響きが随所に現れる。

力強いだけではなく、美しく繊細な部分もある。

僕には、大胆さと繊細さが同居したアルバムのように感じました。

Rushが使う音の色が、また増えたようにも思います。

神話、宇宙、自然。そして普遍的なテーマ

Neil Peartの歌詞の世界も、さらに広がっていきます。

神話、宇宙、自然。

一見すると、とても壮大なテーマです。

でも、そこに描かれているものを追っていくと、単なるSFやファンタジーではないように感じます。

時代が変わっても人間が考え続けること。

社会のこと。
人と人との関係。
自分はどう生きるのか。

そんな普遍的なものが、壮大な物語の中に描かれているように思います。

前の記事でも書きましたが、やはりRushは歌詞の意味を知ることで、音楽の聴こえ方まで変わるバンドなんだと思います。

👉Rushとはどんなバンド?初心者向けに魅力をわかりやすく解説

「Cygnus X-1」― 物語は次のアルバムへ

そして『A Farewell to Kings』の最後を飾る大曲「Cygnus X-1」。

Rushらしく、ついに宇宙へ行ってしまいます(笑)。

壮大な宇宙を舞台にした物語ですが、面白いのは、この曲だけでは終わらないことです。

物語は次のアルバム『Hemispheres』へ続いていきます。

今のように曲単位で音楽を聴くことも多い時代から考えると、アルバムをまたいで物語が続いていくという発想だけでも面白い。

だから今回あらためて2枚を続けて聴いてみると、『A Farewell to Kings』と『Hemispheres』は、僕には2枚組の作品のようにも感じられました。

『Hemispheres』― 大曲時代の集大成

そして『Hemispheres』。

「Cygnus X-1」の物語を引き継ぎながら、Rushはさらに壮大な世界へ入っていきます。

この頃になると、Geddy LeeのキーボードもRushのサウンドの中で存在感を増してきたように感じます。

ギター、ベース、ドラムだけではない。

アコースティックな響きやキーボードも加わり、3人しかいないバンドなのに、音楽の世界はどんどん大きくなっていく。

そして歌詞もSF的で、まるで映画を観ているようです。

久しぶりにアルバム全体を聴いて、僕にはこの作品がRushの大曲時代の集大成のように感じました。

木々が争う?「The Trees」の面白さ

そんな壮大なアルバムの中で、あらためて面白いと思ったのが「The Trees」です。

登場するのは、人間ではなく木々。

木々が対立し、ついには組合まで作ってしまう。

設定だけ聞くと、少しユーモラスです。

でも、その物語を追っていくと、対立や平等、自由、集団と個人など、いろいろなことを考えさせられます。

Neil Peartは、こんな題材からも物語を作ってしまう。

これもまた、Rushの歌詞を知って聴く面白さのひとつだと思います。

「La Villa Strangiato」― 歌詞がなくてもRushだった

『Hemispheres』でもうひとつ重要なのが、「La Villa Strangiato」です。

Rushにとって初めてのインストゥルメンタル曲。

歌詞はありません。

でも、聴いていると不思議なことに、何か物語が進んでいるようにも感じます。

3人の演奏だけで場面が次々と変化していく。

ここまでNeil Peartの歌詞と音楽との結びつきについて書いてきましたが、この曲では言葉がなくても3人だけでRushの世界を作れることを見せているように感じます。

そして僕には、このインストゥルメンタルというスタイルが、後の「YYZ」へつながっていくようにも感じます。

「La Villa Strangiato」では長く複雑だったものを、Rushはやがてもっとコンパクトな形へ凝縮していくことになります。

大曲を極めたRushは、次にどこへ行く?

『2112』で自分たちのスタイルを確立したRush。

『A Farewell to Kings』では、その音楽をさらに洗練させ、大胆さの中に繊細さも加わりました。

そして『Hemispheres』では、大曲、SFや神話を思わせる世界、複雑な演奏、インストゥルメンタルまで、当時のRushが持っていたものを出し切ったように感じます。

今回久しぶりに2枚を通して聴いてみて、

「ここまで来たら、この先どうするんだろう?」

と思いました。

もっと長くするのか。
もっと複雑にするのか。

でもRushは、そうしませんでした。

彼らは、このスタイルを繰り返さなかった。

次の『Permanent Waves』から、Rushの音楽はまた大きく変わっていきます。

大曲の中で培ってきた複雑さや演奏力を捨てるのではなく、それをもっとコンパクトな曲の中へ凝縮していく。

その先に待っているのが、『Moving Pictures』です。

👉Rush初心者におすすめのアルバム5選|最初に聴くならこれ!

Rushは、ひとつのスタイルを完成させても、そこにとどまらない。

今回、久しぶりにアルバムを最初から最後まで聴いて、あらためていろいろなことを考えさせられました。

やっぱりRushは奥が深い。

だから何十年聴いても、また新しい発見があるのかもしれません。

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